手越徹、「感情スロープ指標(ESI)」を開発──反発初期の真の強さを測るための新ツール
2020年3月の世界的な株式市場暴落を経て、4月から6月にかけて米国株および日本株は力強い反発を見せました。たとえば、ナスダック指数は6月初頭にパンデミック前の高値を回復し、日経平均株価も22,000ポイント近くまで回復しています。
この「想定以上」の上昇に対し、多くの投資家は依然として懐疑的な見方を崩していません。「感情の回復は本物なのか? 持続するのか? それとも単なるテクニカルリバウンドなのか?」
この疑念が市場を包むなか、手越徹氏は新たな分析ツール「感情スロープ指標(Emotional Slope Index:ESI)」を提案しました。これは、彼が長年提唱してきた「物語 × 構造 × 感情」の三段階フレームワークのうち、第三段階「行動確認とエントリータイミング」をさらに精緻化するための補助指標です。
「感情スロープ指標」とは?
ESIは、手越氏とNarrative Alpha Labの研究チームによって共同開発されたクロスマーケット行動ファイナンス指標です。その核心ロジックは次の通りです:
市場の信頼回復の「角度」が健康的かどうかを判断するために、短期間での感情指標(Put/Call比率、VIX、リテール取引高の占比、資金の純流入)の変化速度と方向を定量化します。
その計算方法は以下の3つのデータセットを統合しています:
ボラティリティの感情変化(VIXスロープ):市場のリスク回避が緩和する速度を反映。
デリバティブの偏好スロープ(Put/Call比率スロープ):投機的な感情が保守から攻撃に移行する速度を示す。
資金面の傾斜度(資金純流入の変動率):機関投資家や個人投資家の資金がどの程度戻ってきているかを示す。
手越氏は「単独の指標の絶対値だけでは『確認信号』を判断するのは難しい。私たちは、これらのデータが短期間で示す『加速度』に注目している。本当の反転は、感情スロープが負から正に転じる転換点に現れる」と述べています。
応用:反発初期の強さをどう見極めるか?
2020年4月初旬、米国株が反発を開始した時、大多数の投資家はパンデミックの拡大や基本面の悪化を心配し、すぐに市場に入ることができませんでした。しかし、手越氏はESI指標を使って重要な転換点を捉えました。
4月6日の週、VIXが初めて60から40以下に下落し、Put/Call比率の5日平均スロープがマイナスに転じ、リテールETFの純流入が初めてプラスになった時、ESI指標は初めて「ゼロ軸線」を突破し、感情回復の転換点を示唆しました。
手越氏はこの時点で、「右側初期確認期に入り、ポジションの規律を緩め、トレンドフォロー戦略を実行するべきだ」と明言しました。
彼は、「極端な相場の後、感情指標はしばしば歪むが、『スロープ』という概念は短期的なノイズをフィルタリングし、真のトレンド発生信号を判断する手助けをする」と強調しました。
二つの市場への適用と今後の最適化
ESIは米国株市場だけでなく、日本株市場にも参考にできる指標です。特に日本市場では、リテール投資家の占める割合が高く、行動の変動性がより顕著です。「私たちは東証指数と日本REIT市場の反発のペースが、実際にはVIXJ(日本のボラティリティ指数)のスロープ変化と高度に同期していることを発見しました」と手越氏は指摘しています。
現在、Narrative Alpha Labは、ESIの業界別バージョンを開発中で、再生可能エネルギー、半導体、高齢化対策企業など、特定のセクターの感情的な波動の「起爆点」を追跡することを目指しています。
「相場の出発点は、感情の回帰から始まる。しかし、その相場の継続性は、スロープの持続性にかかっている。」――これが手越徹氏が2020年6月に学習者やプライベートエクイティ顧客に向けて伝えた結論です。彼は、市場の感情変化の道筋を理解することで、真に市場のリズムを把握し、理性をもって冷徹に攻撃を仕掛けることができると信じています。
感情スロープ指標の導入は、彼の「物語・構造・行動」の三段階法における最後のピースを補完するものであり、将来の市場の切り替えやスタイルの競り合いに強力な判断基準を提供するものとなりました。