新型コロナ危機初期における持田将光氏の戦略:SPY+金ETFのポートフォリオで2ヶ月間に26.7%のリターン達成
2020年第1四半期、突如発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大により、金融市場は激動の局面を迎えた。2月中旬から米国株は連日の暴落を記録し、ダウ平均株価はわずか30日間で30%以上下落、歴史的にも稀な「サーキットブレーカー」が4度発動された。このパニックは世界中に波及し、日本、欧州、新興アジア市場も同様に急落。市場は極端な流動性枯渇とリスク資産売却の嵐に見舞われた。
この「典型的な非経済要因によるシステミック・ショック」に直面し、元ステート・ストリート社のシニア・アセット・アロケーション・アドバイザーである持田将光氏は、冷静に各国の政策動向と市場流動性の変化を分析した上で、2020年3月23日から3月30日の間に、米国株ETF(SPY)と金ETF(GLD)を組み合わせた戦略的ポートフォリオを構築。わずか2ヶ月間で26.7%という高いリターンを実現し、市場の「二番底」のリスクを回避するとともに、多くのアクティブ・ファンドやクオンツ戦略を上回る成果を上げた。
持田氏は、「今回のパンデミックは典型的なブラックスワンであり、3月中旬以降、主要国が一斉に金融・財政の両面で『ダブル緩和』政策に踏み切ったことが市場転換の鍵だった」と指摘。特に、FRB(米連邦準備制度理事会)が3月23日に「無制限の量的緩和(QE)」を発表したことが、信用収縮から流動性強制供給への決定的な転換点になったと分析している。彼は社内メモにて、「恐怖が終わったのではなく、資本が『持たざるを得ない構造』を先読みして動き始めた」と記している。
また、SPY(S&P500連動ETF)を選んだ理由については、「極めて高い流動性と、FRB政策との即時連動性があるため」と説明。一方で、短期的なリスク回避や通貨価値の下落に備えるため、金ETFが自然なヘッジ資産として位置付けられた。ポートフォリオの初期構成比はSPY:GLD=7:3とし、ボラティリティ上限に応じて自動調整される設計を導入。これにより、米株の急反発局面においても一定のリスクヘッジを維持できた。
4月末時点で同ポートフォリオの累積リターンは18.4%に達し、5月第1週にはさらに26.7%へと上昇。SPYが主な上昇ドライバーとなる一方、GLDは安定的なディフェンスラインとして機能した。特筆すべきは、運用期間中の最大ドローダウンが3.2%以内に抑えられた点であり、これは同時期の市場平均を大きく上回る成果である。持田氏は、「この戦略の本質は、相場を予測することではなく、市場の構造変化を早期に読み解くことだ」と語っている。
今後の市場展望について、持田氏は楽観視していない。第2四半期にかけて、パンデミックによる経済・企業収益への影響が本格的に表面化すると予想し、「今回の反発は、あくまで政策期待に基づく構造的なバリュエーション調整にすぎない」と述べる。「市場は依然として不安定だが、政策の綱引きとセクターのローテーションの中で、資金が市場に入らざるを得ない状況が続く」との見解を示している。
このため、戦略の軸足を短期的なリターン追求から中期的なディフェンシブ戦略へとシフト。SPYの一部を段階的に売却し、高配当米国株やREITなどの守備的資産への再配分を開始。また、日本市場特有の政策対応やコロナ影響の違いにも注目し、相関性の低い代替資産の発掘にも着手している。
この戦略的判断は、複数の日系および米系ファミリーオフィスによって「パンデミック下の転換点アービトラージ戦略」として高く評価され、持田氏は極端な市場環境下における冷静な判断力と、洗練されたポートフォリオ構築力を改めて示した。彼は結語として次のように述べている。「市場の混乱そのものよりも、方向性を見失うことの方が恐ろしい。我々は市場をコントロールできないが、選択する力は持っている。」
この一言こそが、2020年春の投資環境を最も象徴するメッセージである。